桃の節句
桃の節句の、雛人形は、一対の内裏雛(だいりびな)、三人官女、右大臣、左大臣、 五人囃子(ごにんばやし)、衛士三人の十五人一そろいが正式。
現在のように、雛人形が調度品まで加わった形になったのは、江戸時代末期からだそう。
お殿様が大好きなお姫様に贈ったお人形
丸顔におちょぼ口、細く切れ長の目元。
つんとすました顔ではなく、微笑みで少しくずれた親しみのわく表情。
大内塗りのおひな様「大内ひな人形」は、どうしてこんなに幸せそうな顔をしているのでしょうか?
その理由は、愛妻家のお殿様と美しいお姫様のほほえましいお話からできたお人形だから。
山口の大内氏24代弘世は、京から陽緑門院三条氏という大変美しいお姫様を迎えました。
弘世は、お姫様が華やかな京を懐かしめるようにと、京都河原町の御所人形を作っている職人を呼び寄せ、一室を人形で飾りました。
のちに、この部屋は人形御殿として評判になります。
お姫様もこの贈り物を大変喜んだことから、大内ひな人形は「夫婦円満」「家内安全」のお守りとも言われています。
お姫様は、特にまるい人形を好んだため、大内ひな人形の基本形はまんまるです。
大内ひな人形は、数々の手づくりの工程を経て、2ヶ月かけてできあがります。
「一番難しいのはやはり顔を描くこと。目や口を描くときが一番集中する」
と作者の谷口さんはおっしゃいます。
職人さんとおひな様の個性が一番よく表れるのは、やはり顔の部分です。
ひとつひとつ丁寧に描かれているのも、おひな様の顔が優しい理由ではないかと思います。
丁寧に重ねられた地塗りの朱漆や黒漆。
鮮やかな色漆で描かれた秋草文様。
金箔であしらわれた、大内家の家紋「大内菱」。
大内塗には、西の京と呼ばれる山口の雅な文化が息づいています。